多くの傑作韓国ドラマと映画が誕生し、俳優や監督たちは魅力的な姿でファンの胸をときめかせてくれた。そこで、2023年に開催された映画賞と映画祭のレッドカーペット、スピーチから選りすぐりの名場面を振り返り、2024年も活躍が出来る韓国芸能界から世界を沸かせたエンターテイナーたちをチェックしていこう。
多様性の時代を象徴する「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は今も人気ドラマの一つ
■2023年も止まらなかったパク・ウンビンのシンドローム!
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」でパク・ウンビンが旋風を起こした2022年。2023年もまた、改めて彼女に注目が集まる1年だった。序章は4月に行われた百想芸術大賞。ドラマ作品が頂点を競うTV部門は大混戦となったが、見事大賞を単独受賞したのがパク・ウンビンだった。個人単独受賞は、人気MCユ・ジェソク以来2年ぶり。しかも選考委員満場一致だった。
仲良しで有名な“チームウ・ヨンウ”に支えられながら、涙の登壇となったパク・ウンビン。ハンディキャップは個性であり、誰もが互いの違いを受け入れながら生きていく現代を象徴する“ウ・ヨンウ”を演じられたことについて「 実は私が世の中が変わるのに一役買うという雄大な夢はなかったのですが、この作品をしながら少なくとも以前より親切な心を抱かせるように、また前より各自持っている固有の特性を他と認識せずに多彩さで認識できることを願いながら演技をしました」と目を潤ませながら語った。
この日、パク・ウンビンは「こんな瞬間が来るとは思わなかったんですが… 幼い私が俳優という夢を諦めないで、いつか大きな賞をもらえる大人になれればいいなと思っていました。今日その夢が叶いました 」とも口にしていた。2023年の下半期に配信されたNetflixシリーズ「無人島のディーバ」で、彼女は再び視聴者を魅了した。無人島で15年間漂流した女性モクハが奇跡的に生還し、諦めかけた歌手の夢に向けて再出発するこのドラマのメッセージは「夢を諦めずにいれば、いつになるか分からないが意外な方法で願いが叶う」だった。パク・ウンビンは、モクハのように努力を重ねて夢を叶えてきた人そのものなのかもしれない。
パク・ウンビンの快進撃は続き、釜山国際映画祭開幕式ではMCに抜擢。一緒に登壇するはずだったイ・ジェフンが体調不良で辞退するというアクシデントがありながらも、アジア最大級の国際映画祭のオープニングをたった一人で仕切る大役をこなした。
■リベンジドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」からSFジャンル「ムービング」まで…多様なジャンルが生まれた2023年の韓国ドラマ
上半期の2023年を沸かせたのが、凄絶な校内暴力を受けた主人公が加害者に復讐を遂げていくリベンジドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」だった。思い出深いのは、百想芸術大賞の授賞式。主人公ドンウンを演じたソン・ヘギョは春らしい軽やかなスリーブで天使のような出で立ち。憎むべき暴力の主導者ヨンジンに扮したイム・ジヨンはプリンセスを彷彿とさせるロングドレスと、それぞれ異なる魅力を振りまいていた。二人は揃ってTV部門主演女優賞、助演女優賞を獲得。ステージでイム・ジヨンは「かっこいいよ!ヨンジン!」、ソン・ヘギョも「ヨンジン…私、大きな賞をもらったわ!」と、ドラマの印象的なセリフをもじって会場を盛り上げた。このドラマでキャリアをアップデートしたイム・ジヨンはその後、「庭のある家」にも抜擢。夫のDVに苦しみ、逆襲の機会を狙う一筋縄ではいかない主婦を熱演した。
2023年に多くの話題をさらった大ヒットドラマと言えば、超能力を操る高校生とその家族が謎の殺し屋集団に挑むバトルアクション「ムービング」だろう。韓国では公開後にDisney+の新規加入者数が急増するなど躍進するきっかけとなった。脅威の回復能力を持つ女子高生ヒスを演じ、飛行能力を持つ高校生ボンソク役のイ・ジョンハと初々しいラブラインを演じたコ・ユンジョンは、イ・ジョンジェの初監督作品『ハント』(22)にも抜擢されている。百想芸術大賞のレッドカーペットでは、エレガントなブラックドレスを着こなしつつやや緊張の面持ち。一方のInstagramではお茶目なポーズも可愛らしく披露した。「ムービング」ではクルクルと変化する表情が魅力的だったコ・ユンジョンは、たしかに今年を輝かせた俳優だ。
なかでも目覚ましい活躍したのはハン・ヒョジュだ。大鐘賞シリーズ女優賞を獲得した「ムービング」で演じたミヨンは、国家安全企画部に所属する冷静な要員であり、息子ボンソク(イ・ジョンハ)を守る強い母親。元々アクションをこなせる役者だったが、終盤の銃撃戦ではディティールにこだわるリアルなモーションで“動ける俳優”であることを改めて証明。Netflix映画『毒戦 BELIEVER 2』では、これまで演じたことがなかった殺し屋クンカルを怪演。徹底したフィジカルトレーニングで作り上げた身体から溢れる野性味で、ファンを驚かせた。
映画祭の楽しみと言えば、共演者たちの固い絆を感じる瞬間だ。今年の“フレンドシップ賞”は、青龍映画賞で達成した『密輸(原題)』チームに捧げたい。レッドカーペットでは、チョ・インソンとパク・ジョンミンが先に送迎車を降り、ヨム・ジョンアとコ・ミンシをエスコート。第二部ではリュ・スンワン監督ら製作陣も加わると、本作で音楽監督を務めたチャン・ギハの受賞記念公演や、スペシャル・ステージに登場したNewJeansとともにノリノリで会場を盛り上げた。
さらに、海女たちを都合よく使う密輸王の役で助演男優賞を獲得したチョ・インソンは、「僕ではなくて、パク・ジョンミンが獲るべきだった…申し訳ない」と一言。彼はレッドカーペットの時も、自分ではなくヨム・ジョンアにコメントを促すなど、常に共演者に心を配っていた。続けて「誰よりも一番喜んでくださるキム・ヘス先輩と、最後に熱いハグをしたい」と、キム・ヘスと友情と尊敬の抱擁を交わした。
『密輸(原題)』と賞レースで互角の戦いを繰り広げたのが、『コンクリート・ユートピア』(2024年1月5日公開)だった。荒廃した世界に唯一残されたアパートで、カリスマ性と狂気で住民を率いていく男ヨンタクを演じたイ・ビョンホンが大鐘賞と青龍映画賞で主演男優賞を獲得するなど快挙が続き、日本公開にさらに弾みをつけた。そして本作ではヨンタクに心酔する夫(パク・ソジュン)を恐れを抱いていく妻を演じたパク・ボヨンも記憶に残る俳優だ。今年の名シリーズの一つとして挙げられる「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」で演じていた心優しい精神科医とはまた違った演技が新鮮だった。青龍映画賞のレッドカーペットでの妖精のようなドレスルックは忘れられない。
生きるために嘘を重ねていく女性アンナの顛末を描くドラマ「アンナ」でタイトルロールを演じ、深みのあるキャラクターにもシンクロできるを証明したペ・スジ。今年は自分自身のmiss A時代を想起させるようなドラマ「イ・ドゥナ!」に主演。コケティッシュなドゥナが時折見せる暗い顔には、アイドルという華やかな仕事に隠された光と影が宿っていて、見る者を痛切な気持ちにさせた。百想芸術大賞では毎年恒例のMCとして会場を盛り上げていた。
『コンクリート・ユートピア』『密輸』というブロックバスター作品の双璧に食い込んだのが、2024年2月9日(金)に日本で劇場公開となる『梟ーフクロウー』だ。百想芸術大賞、大鐘賞映画祭、青龍映画賞など2023年の韓国国内映画賞で25冠を達成するなど圧倒的な強さを見せつけた。
新人監督賞を総なめしたアン・テジン監督だが、撮影当時は50歳とベテランの年齢。百想芸術大賞では苦節の多い監督人生を振り返るように「新人監督がデビューするまで多くの紆余曲折があります」と語り出すと、「視覚障害者の役割が容易ではなかったリュ・ジュンヨル、ありがとうございます。 キム・ソンチョル、アン・ウンジン、2人の演技をモニタリングする瞬間が幸せでした」と感慨深げに口にした。
■キャリアを重ねたスターがさらに躍進!2023年の韓国エンタメ界
かつて医師を志すものの結婚でキャリアを諦めた46歳の主婦が、もう一度医学の道を志し奮闘する「医師チャ・ジョンスク」で人気が再燃したオム・ジョンファや、かつてのヒット曲がドラマ「マスクガール」のメインテーマに使われて脚光を浴びたキム・ワンソンなど、今年の韓国芸能界は若手のみならず、円熟味を増したスターの活躍も目立った。
2023年、さらに役の幅を広げたのが、誰もが認める演技派女優チョン・ドヨン。「イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜」では過ぎた青春を取り戻すように恋をするチャーミングな母親、『キル・ボクスン』では主婦と殺し屋という2つの顔を持つクールな女性キル・ボクスンと、一筋縄では行かない母親像を快演。百想芸術大賞のレッドカーペットで着こなしたアレクサンダー・マックイーンのパンツスーツも個性的で、ポーズも茶目っ気たっぷりだった。
そして2023年の映画界のハイライトは、30年務めた青龍映画賞のMCを引退したキム・ヘスの姿だった。YouTubeチャンネル「by PDC」の「仕事帰りの道」では、青龍映画賞のビハインドが明かされている。本番ステージでもすがすがしい表情だったキム・ヘスは「メールを見て皆泣くんです。私が引退するわけでもないのに…」と笑うが、青龍映画賞のMCに抜擢した元プロデューサーが楽屋を訪ねてくるや否や、堪えきれず目を光らせる姿が印象的だった。
その中で、映画人からなぜキム・ヘスが信頼されてきたかが垣間見える瞬間がある。キム・ヘスはヘアメイクの最中、台本チェックと文言修正に余念が無い。彼女は「俳優の方を紹介する時、外見を評価するようなコメントは削除するようにしています。外見ではなく、その方々が韓国映画界にどんな影響を与え、どんな努力をしたのかが重要だからです」と語る。
そして韓国映画界の後輩俳優について聞かれると、「私たちは同じ仕事をしているので、後輩や先輩というよりは同僚。“私が先輩だから、後輩の手本にならなくちゃ”とかいうのはありません。私も、いまなお学んでいるからです。年を重ね、俳優の仕事をこなせば先輩になるわけではないわけなので、“同僚”としている方が楽」と謙虚さを失わない。映画を心から愛している彼女にとっては「私よりも若く、経験値が浅い俳優にも立派で尊敬できる方々は思った以上に多いです。それはすごくうれしいこと」だからだ。リスペクトとフェアな目線で映画にまつわるすべての人と向き合う真摯なキム・ヘスに、さらに尊敬の念が芽生えた。
文/荒井 南
(出典 news.nicovideo.jp)
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